Friday, July 23, 2021

役人の書く日本語

仕事で、日本国経済産業省のウェブサイトに公開されている「グリーン成長戦略」に関する資料の半分ほどを読む機会があった。2050年までに「カーボンニュートラル」と達成するために必要なことが書かれているが、役人が書いたこの資料の日本語はかなりヒドイ。うちに来る企業資料の多くにも共通するが、人に読ませようとか、読んでもらおうとかいう気がないようだし、仕事でなかったら読む気にもならない。

まず、「等」「など」の乱用が目に余る。これらは、例えば、文字数の制限が理由ですべて列挙できない場合に使うべき語句だろうが、実際は多くの場合、現時点では判明していない内容が将来発生する可能性を包含するために書いているのだろう。今後、そんな可能性が現実となった場合に言い訳できるようにする責任回避の例だ。

また、一文内に同じ語句を繰り返し使う。みっともないのである。固有名詞ならともかく、同じ語句をひとつの文中に使うなど、書き方能力がないことを明示している。そして、企業資料にも通じることだが、「推進」「強化」「連携」「活用」が大好きのようである。「充実」と「整備」もきっと好きに違いない。

さらに、無用に長い文章が目立つ。文頭と文末の間に、「しつつ」「とともに」「踏まえ」「通じて」等々々々を都合よく使いながら、これでもかというほどの情報を詰め込み、英語で言えば結論がなかなかやって来ない「アタマでっかちで宙ぶらりん」が続く文や「recursive」の文章にしてしまい、最初から読み直さないといけない場合もあり、また結局は何が言いたいのか不明にさせている。「主語(主格)と述語(述部)の間」と書きたいが、この資料にある文章に主語(行為者)はほとんど特定されていない。「日本国政府」あるいは所轄の「省庁」が主語ということのようだ。

「初期段階から政府や地方自治体が関与し、より迅速・効率的に風況の調査、適時に系統確保を行う仕組み(日本版セントラル方式)の確立に向け、実証事業を立ち上げることなどにより、案件形成を促進し、継続的な区域指定につなげていく。具体的には、事業者の重複確保が問題となっていた系統確保について、系統確保スキーム26を適用した系統の公募への活用に向けて、ガイドラインや関係機関の規程の改訂2021年度中に関連するルールの整備を行う。また、国主導による風況調査、海底・海象調査についての実証事業進め、案件形成を促進する。」

「地域に根ざしたガス事業者は、

地域の需要サイドに対する次世代熱エネルギーの供給に向け、

地方自治体や同業種・他業種との連携により

業務効率化や新たなビジネス創出に取り組む事例を参考にしつつ、

主体的な取組を推進するとともに、

その展開を大手ガス事業者、業界団体、行政がサポートすることを通じて、

ガス事業者による地域への貢献や経営基盤の強化を進める。」

2020年代末の運転開始を目指す米英加等の海外の実証プロジェクトと連携した日本企業の取組を、

安全性・経済性・サプライチェーン構築・規制対応等を念頭に置きつつ、

積極的に支援する。海外で先行する規制策定を踏まえ、

技術開発・実証に参画する。SMRで採用されている革新的技術の技術開発課題の克服について協力を行うとともに、

優れた設計・製造技術をもって脱炭素技術であるSMRの実現に貢献する。」

「8トン超の大型の車については、

貨物・旅客事業等の商用用途に適する電動車の開発・利用促進に向けた技術実証を進めつつ、

2020年代に5,000台の先行導入を目指すとともに、

水素や合成燃料等の価格低減に向けた技術開発・普及の取組の進捗も踏まえ、

2030年までに、2040年の電動車の普及目標を設定する。」

「パワー半導体等の利活用については、

従来のSiパワー半導体の高性能化に加えて、

超高効率の次世代パワー半導体(GaNSiCGa2O3等)の実用化に向けて、

放射光・中性子線施設を活用した物性評価や、高速電子計算機の活用による材料探索等、アカデミアが保有する半導体関連技術・施設等も活用し、

研究開発を支援するとともに、

導入促進のために、半導体サプライチェーンの必要な部分に設備投資支援などを実施することで、

2030年までには、省エネ50%以上の次世代パワー半導体の実用化・普及拡大を進める。」

「将来にわたり、食料の安定供給と農林水産業の発展を図るためには、

生産者の一層の減少・高齢化やポストコロナも見据え、

省力化・省人化による労働生産性の向上や生産者のすそ野の拡大とともに、

資源の循環利用や地域資源の最大活用、化学農薬・化学肥料や化石燃料の使用抑制を通じた環境負荷の軽減を図り、

カーボンニュートラルや生物多様性の保全・再生を促進し、

災害や気候変動に強い持続的な食料システムを構築することが急務である。」

「農山漁村地域の脱炭素化を後押しし、農山漁村地域の活力向上や農林漁業の健全な発展に資する形で、

再生可能エネルギーの導入拡大を加速化するため、

農山漁村地域における再生可能エネルギー導入目標を新たに設定した上で、

小水力発電、地産地消型のバイオガス発電施設の導入、バイオ液肥(バイオガス発電の副産物である消化液)や営農型太陽光発電の活用による地域資源循環の取組の推進等、再生可能エネルギーの地産地消の取組を推進するとともに、

農山漁村における地産地消型エネルギーシステムの構築に向けた必要な規制の見直しを行う。」

3Rの推進等により1人当たりのごみ排出量や最終処分量が着実に減少していることに加え、人口減少の進行によりごみ排出量は今後さらに減少していくことが見込まれるところ、日本全体での廃棄物処理に必要な処理施設の能力は減少していく。」

 

「また、2021年度末を目途に各都道府県に対して「広域化・集約化計画」の策定を求めることで、

広域化・集約化を推進し、

地域の持続可能な廃棄物適正処理体制の構築と併せて、

廃棄物エネルギーを効率的に回収することによる地域のエネルギーセンターとしての機能や、施設の耐震性等を推進し地震や水害等で稼働不能とならないよう強靱性を確保することによる災害時の電源供給や避難所等の防災拠点としての活用など、

地域の社会インフラとしての機能を高めた廃棄物処理施設の整備を進めていく。」

「技術の社会実装をより効果的に促すためのポテンシャル評価が促進される。」

「また、地域の脱炭素化等の推進については、

地域の未来社会像からのバックキャスト型の視点による技術革新や社会変革を促すため、

人文・社会科学から自然科学までの分野横断的な研究開発を推進し、

国や地域のシナリオ策定や政策横断的な視点による効果的な技術・施策の導入手法等に係る基盤的知見を充実するとともに、

その社会実装を促すため、

多様なステークホルダーによる共創の場となる拠点や、こうした拠点も含めた大学等の地域の「知の拠点」としての機能を一層強化するための大学等間ネットワークである「カーボン・ニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」を形成し、

大学間及び産学官の連携を強化する。」

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