Some Words Mother Said

「あんた、誰！」

「こんな人、知らん！」

「（顔を見て）違う。こ～じはもっと丸い顔してた」

「（顔を見て）あんた、こ～じか？」

「（写真を見て）この子がこんな大きなったんか？」

「よう肥えてたなぁ」

「（写真を見て）これ私やな」

「（写真を見て）かいらしぃ」

「（写真を見て）この子、誰？」（「ぼく」）

「まさみはなんで帰ったんや？」

「まさみはすぐ帰る」

「さっきそこにおったん、まさみや」

「いまのうちも見せてもうたことない」

「もうひとりおったな」（「ひでかず。ひでちゃん。亡くなったんや、小さいときに」）

「ひでちゃん。死んでしもたんか」

「なんで？」（「事故で」）

「事故……かわいそうになぁ」

「あんた、どっから来たんや？」（「シンガポールから来たんや」）

「会いに来てくれたんか」

「きょうはどこへ帰るんや？」（「大阪の宿に帰るわ」）

「大阪の梅田か」

「私はここからどこへ行ったらええんや？」

「ひとりぼっちや」

「あんた、私の部屋見たか？」（「いいや」）

「ひとりや」

「夜、さみしい」

（「筆持って、字ぃ書いたり、絵ぇ描いたりしてへんのかいな？」）

「してへん。飾るとこがないから」（「ここで飾ってもろたらええやないか」）

「あかん。そんなことしたら怒られる」

「もう、死にたい」

「何にもわからへん」

「私、もうすぐ死ぬな」（「なんでそんなこと思うんや？」）

「もう、歳いったから」（「100まで生きるて言うてたやないか」）

（無言でうなずく）

「もう死んでもええ」（「なんでそんなこと思うんや？」）

「会えたから」

「みんなといっしょにいたい」

「しんどい」（「どこがしんどいんや？」）

「全部、しんどい」