当然、会見は通訳や翻訳者を無視して進む。ベトナム語の会見を聞きながら、その内容をその場で英訳してタイプできたとしたら、それは「逐語訳」ではなく、同時翻訳タイプ。ちょっと信じがたい。日経新聞と同じビルに支局があった産経新聞の近藤紘一は「サイゴンのいちばん長い日」で、この会見を「ミセス・フンが次々とよこす要点翻訳」で確認したと書いている(87ページ)。
「サイゴンの火焔樹」はまた、トアン氏が「支局のソファでウィスキーをなめている私に、彼はギターを取り出すと、声を抑えてチン・コン・ソンの『美しい昔』を歌ってくれた。かつては、開高健氏の前でも何度も歌ったことがあるという。……いつも一番は日本語で歌った。だれが日本語に訳したのかは知らない。その歌声はいつも寂しそうだった」(348ページ)
「誰が日本語に訳したのは知らない」って、調べればすぐわかるだろ。